袖ボタンの意味
前回、袖ボタンの数の決め方についてご紹介を致しました。お客様によっては「そもそも袖ボタンの意味とは?」と思われる方もいらっしゃいますので、今回はなぜスーツやジャケットの袖にはボタンがあるのか?ということについてご紹介致します。
今回も結論から申し上げますと「袖ボタンは装飾であって、機能的な意味はない」というのが事実です。そういったこともあり前回お伝えしました通り袖ボタンの数も本来自由に決めてよいのですね。とはいえ、袖にボタンが着いた理由には所説ありますので代表的な2つの説をご紹介致します。
①袖で鼻水を拭かないために
1点目はとても印象的なエピソード、実はかの英雄ナポレオン・ボナパルトがかかわっています。
時は1812年、今から200年以上前のお話。ナポレオンがロシア帝国を侵攻した際、極寒の山中を越える道中で隊員達は寒さに凍え垂れてくる鼻水をジャケットの袖で拭いていたそうです。ナポレオンは何度も注意するものの一向に改善されず、相手国を侵略する際にはどの隊員の袖も乾いた鼻水でテカテカに!それは敵国に対して身なりから威圧的に見せることを重んじたナポレオンにとって許せないことの一つでした。
そこでナポレオンが考案したのが袖ボタン。袖で鼻を拭けないように金属ボタンを袖につけたのが始まりと言われています。
しかしよく考えてみると現在ボタンが着いている位置は鼻を拭くにはちょっと難しい部分。真意は分かりかねますが、人一番見た目を気にしていたナポレオンらしいエピソードの一つですね。
②袖まくりをするため
2点目は実用的な理由です。一説にはその昔、お医者さんがジャケットを羽織ったまま診療ができるよう、ジャケットの裾を開いたといわれています。(これを本切羽仕様(ほんぜっぱしよう)といいます。また改めてご紹介致します)その開いた裾の部分を閉じられるよう、袖口にボタンを着けたと言われています。
現在では袖を切り開いたままでボタンを着けないデザインの袖もありますが、昔の方の方が細かな部分まで美意識をもっておられたのか、イギリスには着崩すという文化がないのか、開いた部分はきちんとボタンを留めていたようですね。
全体を引き締めるポイントやアクセントに
「袖ボタンは装飾であって、機能的な意味はない」とご紹介を致しましたが、ファッションを愉しむ方にとっては「装飾」という概念はとても大事だとわたくしどもは思っております。例えばボタンホールの穴を一か所だけ色を変えてみたり、ボタンをラッキーナンバーの数にしてみたり。ボタンの色調を好きな色にしたり。
たかがボタン、されどボタン。全体を引き締めるアクセントや、自分の好みを反映させるポイントとしてお客様には大いにこだわりを発揮して頂きたいと存じております。