ブラッシングの手順

メンテナンス専用ブラシ

オーダージャケットやオーダーコートをお仕立て頂いたお客様から、必ずお尋ね頂くのが「お洋服のお手入れ」について。せっかくお創り頂いた大切なお召し物ですので、ウールのスーツでしたら通年、秋冬物のジャケットやコートでしたら「可能な限り着用した1日の終わりにブラッシングをしてください」とお伝えをしております。
加えて、「洋服用のブラシはどこで、どのようなものを購入したらよいですか?」と多くのお客様からお声がけ頂きますので、先日よりSyuhariのウェブショップにて洋服ブラシの販売を開始いたしました。
とはいえ、実はブラッシングの正しい方法はスーツやジャケットにこだわりのあるお店でないと教えてもらえないことが殆ど。高級なスーツやジャケットを扱うセレクトショップの店員さんでも、洋服ブラシのかけ方を知らない方は意外と多いようです。

お洋服のブラッシング、初めてですと難しそうに感じますが、やり方を知って一度やってみれば難しいことはございません。何を隠そう、スーツの本場イギリスでは、ジャケットやコートのブラッシングは紳士淑女の嗜みとして子供の頃から自分で行うそうです。

本日のブログでは、洋服ブラシを使ったジャケットやコートのブラッシング手順をご紹介致します。ぜひお手元の大切なお洋服やマフラー、ストールなどにもお試し下さいね。

カシミヤやウールのお洋服にブラッシングが必要な理由につきましては、洋服のお手入れについてをご覧ください。

ブラッシングの手順

まずブラッシングを行う前に、予めポケットの中には何も入っていない状態にします。これはブラッシングやお洋服の保管に際してスーツやジャケットの型崩れを防ぐためです。(予備のボタン1個程度の重さでしたら入っていても問題ありません)

① お洋服はハンガーにかけ、できればそのハンガーを洋服掛けか壁のフックなどに引っかけて固定をします。引っかける場所がない場合はハンガーを利き手と反対の手で持ちます。

② 襟や袖の形を整えます。フラップ式ポケットでフラップがポケットの中にしまわれている場合は外に出します。

③ まず最初のブラッシングです。お洋服ブラシを利き手に持ち、お洋服の下から上に向かってブラッシングをします。袖の場合は袖口から肩の方向へ向かってかけます。生地の方向の逆にブラッシングをすることで、繊維の中に入り込んだ埃を浮かせます。

④ 次に仕上げのブラッシングです。(つまり、ブラッシング自体は最初と最後しかありません)ブラシを生地の方向にそって上から下にブラッシングをしま す。最初のブラッシングでかき出した埃を落としながら繊維を整えるイメージです。

⑤ 最後にもう一度お洋服の形を整えます。ここで襟や肩の形を整えてハンガーにかけておかないと型崩れの原因になりますのでご注意下さいね。

余談ではありますが、私は以前大切にしているカシミヤコートの襟を、うっかり変な方向に折ったまま1年間クローゼットで保管をしてしまったことがあります。翌年、そろそろコートの季節だと思いクローゼットから出したら、どんなに直そうとしても変な方向に襟が向いてしまい青ざめた経験があります。もしそのようなことが起こってしまいましたら当店にてプレスサービスを行いますので、焦らず安心してご持参くださいませ。

ブラッシングのコツ

① ブラッシングの動作は大きく、生地の流れに合わせて一定のリズムでテンポ良く行います。ジャケットでしたら一箇所につき上から下まで3回サッサッサ、コートでしたら4、5回サッサッサッサッとかけるイメージです。時間でみると一着につきトータル1分程度で十分です。

② 最も汚れや埃がたまりやすい場所は顔に近い肩や襟です。どうにも疲れた!もう何もしたくない!という日は肩と襟部分のみブラッシングをしてから眠りにつきましょう。

③ 襟裏やポケットのフラップの裏という外側に面していない場所も埃はたまります。こちらは毎回でなくとも、2、3回に1回はブラッシングをしましょう。

マフラーやニットにも

スーツやジャケット、コートの他にも、ウールやカシミヤのマフラーやニットにもブラッシングはお勧めです。特にカシミヤのニットは袖の下(脇腹部分)などピリング(毛玉)ができやすい部分も着用後にブラッシングをすることで毛玉が発生するのを防ぐことができます。またカシミヤのマフラーやストールもブラッシングをすることで美しい毛並みを整えることができますよ。ただし、カシミヤやアンゴラのマフラーやニットのように繊維が繊細でデリケートな生地の場合は、しなやかできめ細かな天然の白豚毛のブラシを用いるのがポイントです。

ブラッシングも楽しい時間に

最初は大変だな、と思ったお洋服のブラッシングも回を重ねるごとにその動作自体が愛おしくなるものです。その日一日自分を包み込み、励ましてくれた相棒を労う気分というのでしょうか。1日の終わりにブラッシングをすると、お洋服になんともいえない愛着が湧いてくるものです。

その他、洋服ブラシのブラッシング方法でご不明な点がございましたらスタッフまでお気軽にお問合せ下さいませ。